もっと器用に生きれたらよかったのにね。





      窓越し、






君を初めて見かけたのはいつ頃かな。
いつも決まった時間に来て、友人を待つ君を見つけたのは。
初めの頃は待ち合わせかと思ったけど。相手の反応を見る限りそうではないらしい。
そして待っている相手はただの友人ではなく、君の想い人らしい。


そんな君が今日は店の前にいた。
どうやら彼とは行き違いになったようだ。いつもいつもご苦労なことだね。


「中に入りませんか?もっといい物件紹介しますよ」


そう誘えば意外なほどすんなりと乗ってきた。
適当な物件を勧めながら話をしていく。聞き流されているあたり、別に契約する気はないのだろう。


「ここ、なんてどうかな。近くにお酒飲めるところとかあるし」


先程と変わらず興味を示すことも無い。



「見に行ってみようか。ここから近いし」


そう言って無理に腰を上げさせた。
幸い今日は車で来ていたので、助手席に押し込む。


「着いたよ」
「全然近くないんですけど。つーか、あきらかに学生用じゃないでしょ」
「うん、俺のマンションだしね」
「帰る」
「まぁ待って。近くにお酒飲めるところあるって言っただろ。お詫びに一杯奢るよ」


そういって返事も聞かずに、手を引いて近くの店に連れて行った。
からかわせたのが余程嫌だったのか、店に着くなり呑みはじめた。
速いペースで杯を重ねていく彼をみて思わず笑ってしまった。
それはね、口当たりは良いけど度数が高いから気をつけて、と心の中で忠告する。
暫くして、酔いが回り始めたのか、へらへらと笑いながら色々話をしていた。
学校のこと、好きな作品、課題、講義のこと。この子は本当に勉強が好きなんだなぁ、と頭の端で思った。


大分呑みすぎたのか、一人では歩けなくなるほど酔っていた。


「俺のマンションに行こうか。どうせ一人じゃ帰れないだろう?」


そう言って、行きと同じように手を引いて歩いていく。
行きよりもずっと時間をかけてマンションまで帰ってくると、今度は眠そうに目を擦っている。
部屋にいれてベッドに座らせた。目は半分以上閉じていて、体も支えられなくなっている。


「水、飲んで。そしたら少し横になったほうがいいよ」


コップを手に持たせたけれど、手に力が入っていなかったのか床に落としてしまった。


「っぁ、ごめん」
「いや、いいよ。割れなくて良かった。でも服が濡れたね。着替えたほうがいい」


自分はそんなにやさしくもお人よしでもなかったのに、気が付けば君の世話を焼いていた。


「なにか服を取ってくるから、ちょっと待っててね」


ちょっと待っててね、と言ったのは無駄だったらしい。半裸、というか下着一枚でベッドに潜り込んでいた。


「まぁ、別にいいけどね」

でも君、男の人が好きなんだろう。男がそういう対象に入るのにどうしてアッサリ男のベッドに入るかな。
危険、とか考えないの。
君を見ているとまるで歩き始めたはかりの子どものようだと思う。
危なっかしくて、目が放せなくて、構いたくなる。


「秋、彦」
「ねぇ、君ぐらい一途な子から愛されるのってどんな気分なのかな」


きっと凄く幸せなんだろうね。
そう言外に伝えても言葉が返ってくるはずもない。


「でも君はもっと愛してくれる人を好きになったほうがいいんじゃないのかな」
じゃないと君がいつか疲れきってしまうよ。


目が覚めたら君は怒って帰ってしまうから、せめて君の深くに残っておきたいな。


「アキヒコ君によろしく」







―――――あとがき―――――
篠田さんは男の人も女の人もいけるんじゃなくて、からかっただけなのかな?と思って書いてみました。
篠田さんは結構好きです。キャラも声もかっこいい。
でも最近ちゃんとしたエゴ小説書いてないなぁ。
野分とかホント忘れそう……。


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