お前は星のようだ。






     星の君





「おかえりなさい」

珍しく家にいる野分はリビングで洗濯物をたたんでいた。

「ただいま」

久々の休みなのだし、普段キツい仕事なんだからゆっくりすればいいのに、家事をこなしている。

「ご飯できてますよ。食べますか?それとも先にお風呂にしますか?」

ホラ、全部やってしまっている。

「メシ」

なんて横柄な態度だろうか。自分が嫌になる。
どうしてありがとう、とかそういう言葉がさらっと言えないんだ。
じゃあ、すぐ準備しますね、と野分が立ち上がる。

「な、何か手伝う。メシ、作ってもらったし」
「大丈夫です。座って待っててください」
「あ、あぁ」

疲れてるくせに、こうやって俺の世話を焼いて、大変じゃないか?

「ヒロさん何かありました?少し疲れてるみたいですけど」
「へ、い、いや別にそんなことねーけど」

それはコッチの台詞だと言ってやりたい。
“お前こそ疲れてるんじゃないか”



野分は星のようだ。いつの間にか消えてしまうんじゃないか。
また、俺の前から消えてしまうんじゃないか。
今度は二度と帰ってこないんじゃないか。
それがどうしようもなく怖い。

それはきっと“いつ”消えるかがわからないから。
永遠に今のままでいたいと思うのに、出来ないと知っているから。
瞬きをしている数瞬の間にいつの間にか消えてしまいそうで。

「何かあったら言って下さい。一人で抱え込まないで下さい」

だから、それは――

「お前も、お前もなんかあったら話せ。何でも抱え込むくせに何にも話さないのはお前のほうだろ」

消えてしまうくらいないら、俺の元に落ちてくれればいい。
例えそれで俺が潰されても、欠片一つ残さず散ったって構わないから。

「なんでもいいからちゃんと話せ」

だから、どうか一人で知らぬ間に消えてしまわないで。

「はい。じゃあ、ヒロさんも」
「ああ」

お前は星のようだ。



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