宇宙にいけるようになってもまだ、天気予報ひとつ当てられないのはなぜだろう。
梅雨入り、傘入り
濃い灰色の空を見上げながら舌打ちを一つ。
30分ほど前から降り出した雨はしばらく待ったところで止みはしないだろう。
近くのコンビニで傘を買って帰るかとため息を漏らせばポケットの携帯が震えた。
短い振動ですぐに収まったそれを開けば予想通りメールが一通来ている。
〈今からそっちに行くので、ちょっとだけ待っててください。20分くらいで着きます。〉
文面を読んでパチンと携帯を閉じた。あと20分ということはもう家を出て電車に乗っているはずだ。
つまり今更、大丈夫だと送ったところで無駄だろう。自分も大概素直じゃないが、コイツだって言葉が足りない。
これじゃあ「ありがとう」も言えないだろ。
ぼーっと構内の掲示板を眺めながら時間を潰していると後ろから肩を叩かれる。
「お待たせしました」
差し出された傘に小さく礼を言いながら受け取り大学を出た。
「ついでに買い物して帰りましょう」
今日の晩は何がいいですかとか、そんなありふれた会話をしていたら傘の内側に雨が入ってきていることに気づく。
見上げれば傘に小さな穴が開いていた。
「草間さん」
「何ですか、ヒロさん」
「雨漏りがするんですけど、この傘」
お前分かっててこの傘持ってきただろう、と睨み付けてやれば是とも非とも言わずにっこりと笑った野分と目が合う。
なによりその顔が答えだ。
野分は俺の差しているビニール傘より二周り大きい自分の傘を俺のほうに傾けた。
「入りますか」
むかつく。
その笑った声も、コイツの策略に嵌まることも。
一歩踏み出せばさっきまで傘で隠れていた野分の顔が見えた。
「カバンの中のUSBが濡れると困るんだよ」
「そうですね、ヒロさん最近寝るの遅かったですもんね」
自分が雨に弱い電子機器を持っているのを知っていてこういうことをするコイツは本当に性質が悪い。
じゃあ、本当はカバンの中に入れていれば大丈夫だと分かっているのに、コイツの策に乗る自分は?
―――――あとがき―――――
短いなぁ。
最近、短編というか、本当にショートストーリーで自分的にはちょっと物足りないお話しか浮かびません。
でもタイムリーじゃないですか?このお話。
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