月夜短し、恋せよ





長い夜
「なに考えてんだ、このエロガキ!!自重しろボケ」 一緒に夕飯を食べ、お風呂にも入り、さぁ恋人の時間だとヒロさんを担いで寝室まで運ぶ。 大暴れする照れ屋な恋人をベッドに下ろした瞬間に渾身の蹴りとお叱りの言葉が飛んできた。 これは痛い。 「今日は絶対にしないからな!!俺はもう寝る」 お前も部屋に戻って寝ろ、と毛布を頭からかぶって布団の中に引きこもってしまう。 体を丸めてるのかベッドの真ん中だけがふくらんでいる。 さて、どうしようか。明日は朝から仕事だし、できればたっぷりヒロさん補給したい。 しばらく考えて、俺はわざとしょげた声を出して「わかりました」と言ってドアを閉める。 出ていったフリをしてヒロさんの様子を探ってみようか。 ドアを閉めて息を潜めてじっとヒロさんを待つ。 部屋の電気はつけていなかったから月明かりだけが照らしている。 それから少しするとベッドの中心がもこもこと動いた。 そろそろ息苦しくなってきたんだろうなと思っていたら布団の端っこからぴょこんとヒロさんが顔を出した。 ヒロさんの頬が布団の中で暖まって少しピンク色になっている。 (ぴょこって、ぴょこって出てきた。あああああ、かわいい、かわいすぎですヒロさん!) まるで巣穴から出てきた小動物のようなヒロさん。思わず叫びそうになるのをグっと我慢して様子を窺う。 あぁ、出来るならすぐにベッドにダイブしてしまいたい。 ヒロさんはそっと溜め息をついて、今度は枕に顔をうずめる。 コシコシと顔を枕に押し付けながらしゅんとした声が暗い部屋に響いた。 「野分……」 「はい」 呼ばれたから返事をしたらものすごい勢いで振り返られた。ハクハクと声にならない言葉を発している。 「何ですか、ヒロさん」 先を促すと猛スピードの枕が飛んできた。 あまりのスピードにまったく目が追いつかず顔に直撃した。痛すぎて思わず蹲ってしまった。 一方ヒロさんはもう一度布団に潜って、世界一周して大西洋に身投げしてくると喚きながら布団をがっちり掴んで離さない。 デジャヴだなぁと思いながらベッドの中心に引きこもりっぱなしなヒロさんの布団を引き剥がす。 寝起きのよくないヒロさんは何回起こしても布団に帰ってしまうので布団を剥ぐのはお手のものだ。 コロリと出てきたヒロさんの頬はさっきのピンクから真っ赤に変わっていた。 もう一つ残った枕に顔押し付けて小さく言う。 「お前のせいだ。お前が布団剥がすから、寒くなった」 「野分、お前機嫌よさそうだな」 「あ、おはようございます」 にっこりと笑って挨拶をしたら先輩の顔が若干引きつるのが分かった。 「お前、顔にひっかき傷が……。うわぁ、痛そう」 この痛みさえ、夜をしのぶ目印。 ―――――あとがき――――― ツンデレすぎてDVなヒロさんがとっても大好きです。 愛ゆえに暴力、じゃなくて恥ずかしいから殴るという発想はスゴイよね。 ヒロさんがつけた傷をみながら野分はきっとニマニマしてる。 傍から見るとキモイ通り越して怖いですね。 そんなやつが医者とかどうなんでしょう、正直なところ。
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