気が付けば日が沈んでいた。
午睡のススメ
珍しく重なった休日。午前中に洗濯と布団干しをして、午後から買い物に行った。
掃除機をかけるのは野分の仕事で、洗濯物を干すのは俺の仕事。
いつもより遅めの朝食を作るのは野分で、皿を洗うのは俺。昼は買い物の途中で軽く済ませた。
2日分の食品と日用品、服や本を買って、フラっと寄ったレンタルショップで話題のDVDを借りた。
部屋に戻って洗濯物を取り込んで、布団を入れる。
大き目のシーツはピシッと糊をしたものを。太陽の光を吸い込んだ掛け布団をホコリがたたないように掛ける。
溜め込んでいた家事を一通り済ませてソファーで落ち着いていると野分がコーヒーを持ってきた。
「お疲れ様です」
「おう。って、お前もだろ。仕事きついのに、無理して付き合わなくても良かったのに」
「いえ、ヒロさんと久しぶりにデートできて嬉しかったです」
デート、アレが?全くそんな風には感じなかった。デートというか、
「まぁ、デートというか新婚さんの買い物みたいでしたね」
思っていた言葉が返ってきてビックリした。というか、野分の口から改めて言われると急に恥ずかしさがこみ上げる。
「アホか、何だ新婚さんって」
すみませんと大して悪びれもせず謝ってくる。本当に生意気な奴だ。
借りてきたDVDをデッキにセットして野分はポスッと俺の隣に座る。
借りてきたのはアクション映画。別にこれが見たかったわけではなくて、新作だったからだけど。
1時間ほどしたところで野分が舟を漕ぎ出した。
まぁ、普段の仕事が仕事だし、疲れていたんだろう。その上買い物も家事も手伝わせてしまったし。
コクッと肩に寄りかかってきたから、少し横にずれて野分の頭が膝にくるようにする。いわゆる、膝枕。
普段ならこんなことしないけど、今は眠っているし、いいか。
風邪をひかないように自分が羽織っていたものを掛けてやる。
本当は布団に連れていってやるのがいいんだろうけど、この体を持ち上げることは俺には無理だ。
DVDをとめて、テレビを消す。そのままでもいいような気はしたけど、目を覚ますといけない。
机の上の本を読みながら野分の髪を触る。
自分と違って真っ黒で少し固めの髪。好奇心に負けて少しだけ引っ張るとンン、と寝返りを打った。
起こしてしまったか、と心配したけど未だに目は開かない。
久々に寝顔を見た気がする。寝顔は17の頃とあまり変わっていない。
起きているときはさすがに成長しているとは思う。あの頃のあどけない感じはすっかり消えて、男っぽくなった。
本にしおりを挿んで机に置く。読もうと思ったけど気分が乗らない。こんな時は読まないほうがいい。
空いた両手で髪や瞼を撫でているとこっちまでウトウトしてきた。
ソファーの背に体重を預けて少しだけ目を閉じる。
30分、30分したら夕飯の準備をしよう。それまで、少しだけ。
クシャっと髪を撫でられる感触がした。
あれ、いま何時だ?パチパチと目を閉じたり開いたりしていたら、起きちゃいました?と声が聞こえる。
部屋が真っ暗で顔は見えないけど、少し上を見たら野分がいるのがわかる。
「いま何時?つーか俺ソファーにいたはずなのに」
「俺が運びました。本当は飯作ろうかとも思ったんですけど、誘惑に勝てなくて」
「誘惑?」
「眠かった、ってことです」
ふうん、と体を起こそうとしたら布団に戻された。何すんだ、飯作ろうと思ったのに。
「眠いんだろ?飯作るから離せ。出来たら起こしてやる」
「ヒロさん、いまね10時です」
10時!一体何時間寝てんだ、俺!どうりで体が痛いわけだ。
「だから、もうこのまま寝ちゃいましょう。明日早く起きて風呂に入ればいいじゃないですか」
どうせ掃除もしてるんだし。そう言いながら強引に俺を元の位置に戻すと満足そうに体を寄せてくる。
子供かお前はと一発殴ってやろうと思ってやめた。
抱え込むように包まれる。布団の温かさとこいつの体温で何もかもどうでもよくなった。
まぁいいか。俺も眠いし、起きるのも億劫になった。
スルリと首に手を回せば、驚いたのか野分が少し体を開けた。
その距離を縮めるように体を寄せると、上からクスクスと笑う声がする。
睨むように見上げれば嬉しそうに額を寄せてきた。
「いま、メチャメチャ幸せです、俺」
野分の誘惑に負けてそのまま目を閉じた。
―――――あとがき―――――
ひっさびさの更新です。
最近眠りネタ気に入ってます。だって寝る直前と起きた直後は幸せの時間じゃないですか。
布団でぬくぬくとしている時がめっちゃ大好きなんです。
因みに昼寝は10〜15分が一番いいらしいですね。まぁ、無理ですが。よけい眠くなるし。
……ちなみにこの小説、野分verもあるって言ったら笑いますか?
まとめれたら近日中にUPします。
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