普段はこんなこと絶対しない人なのに





      むかしばなし  another story	





今日はヒロさんが休みの日のはずなのに家には電気が点いていなかった
買い物かな、と思って暗闇に話し掛けたら
噛み殺した様な声が聞こえた
電気を点けるとそこには
暗闇の中、膝を抱えて震えているヒロさんがいた




「の…わき?」




目には涙を一杯溜めて
堪えきれなかった涙が目尻から零れていた
普段泣かない人なだけに驚いた
まるで幼い子供のような姿





「のわき・・・野分・・・野分っ・・・」




俺の名前を呼びながら必死に手を伸ばして
まるで縋りつくようにして抱きしめてくる




「野分・・・」




目一杯伸ばされた手を取って
抱き止めれば
安心したように身を任せてくる





「ヒロ…さん・・・?本当にどうしちゃったんですか?」




出来るだけ優しく話しかける
落ち着くように背中をそっと撫でれば、俺の胸に頭を寄せる




「行くな…何処にも行くな…傍に居てっ・・・」




「離さないで・・・・・・」




普段は強い声が


震えていた




いつもなら強い光を持った瞳が


濡れていた





俺より一回り小さな手が


縋るように俺の背中に回されていた




どうしてこんな愛しい人を置いて何処かに行けるだろう
こんなにも愛している人の手を離せるだろう




泣き疲れて眠ってしまったらしいヒロさんをもう一度強く抱いて
耳元でそっと囁く
眠っていても聞こえるように
起こさないように




「ずっと傍に居ますよ」




「絶対離さない」




だからそんな風に泣くのは止めてください
貴方を哀しませるもの全てから貴方を守りたい
守れるような男になりたい





今はまだ何故そんなに泣いているのかは分からないけど
いつか俺に話せるようになったら聞かせてください
貴方の全てを知りたいから




普段はあんな弱い姿俺には見せない
年上の矜持が許さないのだろう
そんな貴方が見せた不安に押しつぶされそうな顔、縋る様な仕草
それを受け止められるようになりたい
だって俺は貴方の恋人なのだから




―――――あとがき―――――
むかしばなし 野分目線です
たまには包み込む優しさを・・・と思い
ヒロさんのほうが年上ですが
野分だってやる時はやるんです!!
今迄で一番楽しかったお題です「むかしばなし」



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