苦い過去は
いつまで経っても残る
まるで小さな棘のように
不意に痛みだす
誰にも知られたくない過去がある
今はまだ
話せない






      むかしばなし





本に挿んであった一枚の写真
つくづく俺は本に妙なものを挿む癖があるらしい



その写真は大学生の頃のもの


そう、
人生の中で最も怠惰な生活を送っていた頃の写真



勿論学業で手を抜いたりしていたわけではないけれど
生活そのものは最悪だった
秋彦への想いが重なり過ぎて
精神的にも身体的にも追い詰められていた俺は
他の奴と寝ることもあった
その度に後悔して・・・




あの頃のことは野分に話していない
話して、
嫌われたらどうしようとか
軽蔑されないだろうかとか
そんな事ばかり考えてしまう






野分に嫌われて
拒絶されたら
俺は平静を保っていられるだろうか・・・



野分に拒絶されて・・・
独りになって・・・




「……っ……ぅ…ぁ…く……」





―ガチャッ



「ヒロさん?いないんですか」
「の…わき?」
「何だ、いるんじゃないですか。どうしたんですか、電気も点けずに……泣いてる、んですか?」
「のわき・・・野分・・・野分っ・・・」




気が付けば
俺はガキみたいに泣きじゃくって
野分に必死に手を伸ばしていた



「ヒロさん、どうしたんですか?」
「野分・・・」



抱きしめて欲しくて
目一杯手を伸ばしたら
優しい腕がギュッと俺の体を支えてくれていた




「ヒロ…さん・・・?本当にどうしちゃったんですか」
「行くな…何処にも行くな…傍に居てっ・・・」
「・・・・・・」
「離さないで・・・・・・」




不安で押しつぶされそうなんだ
いつか全て知ってしまったお前が俺の前からいつか居なくなってしまうんじゃないか、と




その不安から逃れたくて
もう何も考えたくなくて
俺はお前の腕の中で眠っていた


 

その温かい腕の中で目を閉じればその不安から守られているような感覚に陥る




「ずっと傍に居ますよ」



遠くから聞こえる声は
俺の一番欲しかった言葉



「絶対離さない」



いつか
『あの頃は・・・』
とお前に話せる様になればいい
むかしばなしに出来るようになるまで






苦い過去は
いつまで経っても残っている
不意に痛みだす小さな棘は
まだ抜けないけど
いつか自然と落ちるだろう
その時貴方に話すから
そしたら隣で笑っていて





―――――あとがき―――――
篠田さんの時「もうこんなことやめる・・・」
といっていたヒロさん
ということは何回か同じことがあったんじゃないか、と思って書いた作品
晴和の作品にしては幾分かシリアス風味
何となく野分に縋ってるヒロさんが書きたくて・・・


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