その一言には勝てる気がしない。

       リリィ


(くそ……全然終わらねぇ…。)


   カタカタカタカタカタカタ


「アノー、ヒロさん。」
「あ゛?」
「あ、すみません。でも食事できたんで食べませんか?」
「え、もうそんな時間か。もう少ししたら一区切りつくから先に食ってろ。」
「駄目です。ヒロさんそう言ってお昼も抜いたじゃないですか。」
「そうだったけ。」

(そーいや昼食ってないな…。)

「そうですよ。食事を抜くのは体にも良くないですから、きちんと食べてください。」
「わかった、わかったって。わかったから先に食ってろ。」
「じゃあヒロさんの仕事が終わるまで待ってます。そうしたら一緒に食事とりましょう。」
「すぐに終わるから先に食ってろって。」
「すぐに終わるんなら待ってます。」

(梃子でも食べん気か…。)

「はぁ、わかった食うよ。」



(さっきの資料はやっぱりあっちに入れるべきだろうか、それとも…)

「ヒロさん、食事しながら考え事してると消化に悪いですよ。」
「う…」
「なかなか終わらないんですね、論文。」
「まぁな」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけねぇだろ、寝不足で頭は痛いし、明日も講義あるからその準備もしねーといけねーし。
大体この論文だって本当は…」

(…最悪だ。野分に当たったりして…。八つ当たりもいいところだ。)

「野分、悪ぃ。こんなこと言うつもりじゃ…」

クスッ

「ッ…、何笑ってんだよ。人が謝ってるんだから素直に謝られとけ!!
つーか人の話真面目に聞いてんのか、お前は!!」
「すみません、でもヒロさんが可愛かったから。」
「な・・・」
「ヒロさんは可愛い人です。」

(ッ・・・なんでこいつは恥ずかしげも無く言えるんだ・・・。)




こいつはいつもそうだ。
どんなに俺が怒鳴ったって、愚痴ったって、こうやってそんな言葉を言う。
俺の目を見て「可愛い」と。
どうすればこいつに勝てるんだろうか…。
いや、少なくともあの言葉には勝てそうも無い。



――――あとがき――――
あの言葉には一生勝てないんだろうな、っていう話。
あの言葉を言われるたびに真っ赤になってる限りは無理だね。

BUMP OF CHICKEN  リリィ
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