『ヒロさん お元気ですか?』






       出せなかった手紙をあなたに






300通を超える手紙
切手も貼ってあって宛名もあって
ポストに投函すればその手紙はあて先に届くだろう
でもその手紙は永遠に投函されることはない
何故なら…




(…何回読んでも恥ずかしい…。どうやったらこんな文章が書けるんだ)




「ヒロさん、どうしたんですか?顔真っ赤ですけど、熱でも…」
「うぉう!!!の、の、の、野分!!いきなり背後から話しかけてくんじゃねぇよ!!」
「?何隠してるんです?」
「いや、何でもない!!何でもないから俺から離れろ!!!」
「…ヒロさん…?」
「う゛…」
「何を隠してるんです?」




(何なんだ、この重圧感…)




「べ、別に隠したわけじゃ」
「じゃあ、見せてください」
「し、資料だよ、大学で使う資料!!」
「じゃあ何で隠したんです?」
「いや、ほら、その、外部に持ち出し禁止のとか」
「ヒロさんはそういうの家に持って帰ったりしないでしょう」
「あ、あの」
「…嘘、吐いたんですか?」
「…」
「何で俺と目を合わせてくれないんですか?」





(…なんで俺が責められにゃならんのだ)




「別に俺は悪いことしてるわけじゃ」
「じゃあ教えてくれてもいいじゃないですか」
「それは…」
「俺に隠し事、しないでください」
「〜〜〜、わかった。但し、何があってもこれは渡さんからな、それが条件だ!!わかったな!」
「そんなに大切なものなんですか?」
「わかったな!!!」
「…はい」
「よし」
「で、それは何なんですか?」
「これは…お前の手紙だ」
「へ?すみませんもう一回言ってくださ…」
「だからお前の手紙だって言ってるだろ!!」



ーバタン


ーガチャン



(〜〜〜、恥ずかしい…恥ずかしすぎる…)




お前が隠してるの分かってて
それでもどうしてもその手紙が欲しくて…



だからお前が居ないときを狙って
もしかしたら帰ってくるんじゃないだろうかとビクビクしながら探して
お前の部屋の天袋の中から紙袋を引きずり出した


お前が隠したがっているのを知っていたけど
それでも俺は
どうしても欲しくて





「ヒロさん、開けてください」
「うるさい、ちゃんと言ったじゃねえか!!」
「ヒロさん、開けて、顔が見たいです」
「こんな顔見せれるか、ボケ!!」
「…俺もそうですよ」
「へ?」
「開けて、ヒロさん」



(“俺も”ってどういう意味…)









ーガチャ




「…」
「…」



(野分?)



(?いっつもならすぐに抱きついてくるはずなのに)



「野分?」
「あんまり、こっち見ないでください」
「へ?」



(お前から、開けろ、って言ったくせに)







「っ、はは、お前凄ぇ顔赤ぇぞ」
「…ヒロさんだって真っ赤ですよ」
「何かお前のそういう顔見るの新鮮かも」
「……ヒロさん」
「ん?」
「何で分かったんですか?俺ちゃんと隠してたのに」
「お前の隠すとこなんか大方予想がつくんだよ」
「…愛の力ですね」
「アホか…」
「やっぱり捨てとけばよかった…」
「出来ねぇよ」
「へ?」
「俺宛の手紙をお前が捨てれるわけねぇだろ」
「凄いなぁ、俺のことなら何でも分かっちゃうんですね」
「何年の付き合いだと思ってんだよ…」
「嬉しいです」
「何が?」
「ヒロさんが俺のこと分かってくれてることが」
「…アホか…」



部屋の中に
真っ赤な顔をした男が二人





300通を超える手紙
切手も貼ってあって宛名もあって
ポストに投函すればその手紙はあて先に届くだろう
でもその手紙は永遠に投函されることはない
何故なら宛先に届いているから


消印のない手紙



配達人は差出人


―――――あとがき―――――
「出せなかった手紙をあなたに」
あなたに、なのにヒロさん目線
矛盾してますね…
そしてのこ話も矛盾してますね

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