今すぐ
貴方に会いたい





     今すぐ会いたい





ヒロさんとの生活はいつもすれ違い
俺が研修医というのが大きな原因なんだけど…


(1…2…3…3週間か)


今日で3週間以上もヒロさんとまともに話せていない
原因は特に忙しい救急外来で研修しているから
ヒロさんの顔を見ることも声を聞くことも出来ない
正直、そろそろ限界



「草間ぁ〜、お前顔色悪いぞ。大丈夫か?」
「あ、はい」
「研修医って大変だろ、俺も研修医時代はきつかったからな」
「でも、先生方はいつも救急外来なんですよね、それに比べたら」
「でも研修医よりこき使われないけどな」
「ははは、でも勉強するところがたくさんあるんで遣り甲斐があります」
「今日はもう上がりだろ?休めるときに休んでおけよ、じゃないと倒れちまうぞ」
「はい、ご心配お掛けしてすみません。じゃあお言葉に甘えてこれで失礼しますね」
「夜に呼び出し喰らわないように祈っておけよ」
「はい」



(今、何時だっけ…っていうか今日何日だろ)


最近時間感覚が無い
昼も夜もひっきりなしに来る患者さん
遣り甲斐がある反面
疲労感も尋常じゃない


ヒロさんに会いたい
会って話がしたい
貴方と顔をつき合わせて
笑って下らない話をして





(今、…1時30分か)


マンションの部屋に灯りがついてる


(こんな遅い時間なのに、何で…)


ヒロさんは定時に仕事がある
今日は平日だし
明日も仕事があるはず…


妙な期待をさせないでほしい
その期待が外れていたら…













「ただいま…」






「お帰り」





「へ…?」
「お帰り、野分」
「ヒロさん…?」
「他に誰がいるんだよ」
「何で起きてるんですか?」
「お前の帰り待ってたからに決まってるだろ」
「俺の…」
「最近ずっと会ってなかったから」
「待っててくれたんですか?」
「まあ…な」
「ヒロさん」
「ん?」
「こっち来てください」
「…」
「ずっと、こうしたかった。こうやって…」



こうやって、貴方を抱き締めて
貴方を傍に感じたかった







“俺も”


俺以外なら聞き取ることも出来ないぐらい小さな声
でもそれは確かにヒロさんから発せられたもの


その証拠に
耳まで真っ赤になった顔を埋めている


その仕草が酷く可愛くて
堪らない


離れていた期間が長すぎて
貴方に飢えている自分がいる


「ヒロさん」
「…」
「ヒロさん」
「…」
「ヒロさん」
「…」
「会いたかった」
「…」


「野分」
「はい」
「…」







“もっと”



聞き取れないほど小さな声
真っ赤になった顔を見られないようにと
強く抱き締めてくる貴方がどうしようもなく愛しくて
無意識に腕に力が入る


「このままで…」



―――――あとがき―――――
問題です
最後の一言は誰が言ったでしょう

ご想像にお任せします

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