やばい、ハマったら終わりだ。






      台風の中心にいる人、巻き込まれる人






「ゲッ!!」

客が来ているからと内線で呼ばれてロビーに行ってみるとそこには上條さんがいた。

「げ?」
「い、いや何でも」

一瞬上条さんの額に確かに青筋が見えた。この人の実力は前回文字通り体感している。
もうあんな思いは二度とゴメンだ。
上条さんから本人から受けたダメージはもちろん、あの後の野分を俺は一生忘れない。

「?さっきから何キョロキョロしてるんだ」
「いや、もしこんなトコあんたの彼氏に見つかろうもんなら俺は明日の朝日拝めなくなるんで」

言ってる意味が分からん、とばかりに首をかしげる上条さんは本当に愛されてると思う。
大切にされてるから本性知らないんだ。
アンタの彼氏はマジでやばいんですって。俺、このあいだ殺されかけたんですって、と言ってやりたい。

「で、あの、用って何ですか。俺結構忙しいんですけど」

というか野分に見つかりたくないんで早くしてください、と心の中で急かすと
おもむろに紙袋を差し出される。いや、押し付けられる。

「はい?」
「はいじゃねぇ、受け取れ」
「いや、何ですかコレ」
「前の侘びというか、その、怪我をさせて悪かった」

へぇ、一応気にしてくれていたらしい。
野分のインパクトが強すぎて痛みなんかすぐに吹き飛んだけど、この人はずっと気に病んでいたんだろうか。
悪いことをした。こんな風にされるとさすがの俺でも反省せざるをえない。

「いや、俺のほうこそスンマセンでした」

多分この人はあの時俺を殴る権利があった。いや、権利とかそんな問題じゃないかもしれないけど。
けど、俺はこの人の心をぐちゃぐちゃにかき乱したんだ。アレぐらいの罰は必要だったのかもしれない。

「だから、これは受け取れないです。あれは俺が悪かったんで」
「いや、これは俺の気持ちの問題だから受け取ってほしい」

ホント、男前な人だ。やばい、カッコイイな。そりゃ野分も惚れるわ。

「じゃあ、ありがたく頂きます。あの、ホントすんませんでした」
「じゃあこれでチャラってことで」
「や、ちょっと待ってください。時間あるならなんか飲みません?奢ります」
「は?忙しいんだろ?」
「いや、あれは言葉のあやつーか。これじゃあ俺の気が済まないんでコーヒーぐらい奢らせてください」

何を、言ってるんだろうか。気が付けば席を立つ上條さんの腕を掴んでいた。
やばい、この手を離さないとやばい気がする。じゃないと俺は何を言い出すか分からない。

「あの、上條さん――」

「ヒロさん」
「おー、野分」

あぁ、通りでやばい気がした訳だよ。俺の野生の本能凄いな。
俺の気持ち的な意味じゃなくて、生命的な意味でやばいわ。

「どうされたんです?俺の職場に来るなんて珍しいですね」
「まぁ、ちょっとな。ってかお前何持ってんだ?」
「これですか?実は持ってたペンが何故か急にへし折れてしまって」

なんてあからさまな警告。
“それ以上ヒロさんに馴れ馴れしく近づくな”ってか。
どうでもいいけどホント真っ二つだな。あのペンが俺の末路か。

「じゃ、じゃあ俺はこの辺で失礼します」
「あ、ああ――」
「俺いま休憩なのでコーヒーでもどうですか。先輩も」
「い、いや俺はいいって。そろそろ戻んねーと」
「そうですか、残念です」

これ以上いたら本当に明日の朝日が拝めなくなるかもしれない。
野分の目はマジだ。
それに俺も色んな意味でやばい。


「何考えてんだよ、俺」

これは多分恋とかそんな淡い感情じゃない。
とっちかつーと憧れとか、そういう感じ。そうに決まってる。
じゃなきゃおかしいだろ。相手は男で、しかも彼氏付き。
これはきっとただの憧れだ。



「あぁ、だから言ったのに。」
「何を?」
「何でもないです。ヒロさんコーヒーだけでいいですか?何か食べます?」
「いや、いらん」



―――――あとがき―――――
いやー……、なんとお詫びしてよいものやら。
まず第一に遅くなってまったことですね。
おいおい、誰だよ7月初旬にはあげるって言ってたのはよぉ。
と怒られても仕方ありません。ほんとうに申し訳ないです。
次にリクエストに全然副えてないです。
それはもうビックリするほどに。
「津森→ヒロさん←野分」
リクエストと副えてるのは登場人物ぐらいのもんだ。
ああああ、本当に申し訳ないです。
「こんなんリクエストしたんとちゃうわー」とちゃぶ台ひっくり返してやってください。
い、一応前編がシリアスで、後編がギャグ、のつもりで。ギャグの難しさを体感いたしました。

かりんさんへ。
期日が大幅に遅れたこと、リクエストに全く副えていないこと、本当にすみません。
こんなのでよければ貰ってやってください。


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