ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます。
女って怖い生き物だ。




約束と心臓
「痛っ」 コーヒーを淹れていたら後ろから野分の小さな声が聞こえた。 左手の小指を撫ぜたり、噛んだりしている。お前医者なんだからちゃんと消毒ぐらいしろよと叱れば紙で切っただけだと言われた。 コーヒーの入った二つのカップを持って野分のいるソファーに行く。近くのテーブルにカップを置いて野分の手を見た。 見れば確かに血も出ていないし、皮が小さく剥けているだけだ。 でも紙で切ると地味に痛いよなと言えば、考えないようにしてたんだから言わないでくださいと野分は苦い顔をした。 野分の左手を取って舌で傷を舐めると驚いて手を引こうとしたので、強く握って手を引かせないようにした。 ゆるく噛んだり舌でなぞったりしていたら沁みたらしい。 「痛い?」 「だいぶ直りました」 今度は傷ではなく指の根元を噛む。さっきのような軟らかくではなく、くっきりと歯形を付けるように。 野分の小指は長くて、長時間口に入れるのは結構辛い。 「痛い?」 「全然」 にっこりと笑って応えた野分の手を離して見ると前歯や犬歯の跡がくっきりと残っていた。 この指に石つきの首輪付ける女は多い。恋人が出来たらこの指に、結婚したら薬指に。 もとは春を売る女が自分の客に誠実さの証として送ったその指。 時代が変わったのに人は何も変わっていないものだ。 その指に今は約束を乗せる。 絡めて、雁字搦めにして、裏切りを決して許さない。 "約束"してください。裏切らないと。 「この指、くれって言ったらくれる?」 歯跡を舌でなぞりながら言ってやれば、ソイツは笑っていいですよと言った。 正気かと笑えば、俺の左手を取って同じように噛んできた。 小指ではなく薬指を。 「その代わり、この指ください」 にっこりと笑いながら強く噛まれる。 左の薬指に同じようにくっきりと歯型が刻まれた。 約束がほしいなら、あげるから。だからあなたの心臓を俺に下さい。 ―――――あとがき――――― べ、別に食いちぎったりしないですよ!! アグアグ噛んでるだけですからね!! スキンシップの一環ですからね!!
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